ひとりチェズレイはホテルの一部屋で考えていた。モクマは今、急
敵対組織を殲滅し、この場所を己の影響下に置くにはどれが最善策
この様子では最善策どころか案さえも産み出せない。早々と切り上
こんなとき、モクマがいたら悩みは解決するだろうしそもそも原因
『チェズレイが本当にしたいと思うまでキスしないからね。それだ
手も繋ぎ、抱き締められ、告白され、親に紹介までされたのにと思
はあ。一つ息を吐き、チェズレイは身体を起き上がらせると鍵盤蓋
それとも、キスもしてくれないか。
チェズレイの視界が昏くなっていく。知らず知らずのうちに自己催
「チェズレイ」
モクマの姿が現れるもののキスをしてくれない。
『慌てなくていいよ』
「慌てていません、私はあなたとキスがしたい……愛しているのに
覚醒してしまった。不完全な導入だから仕方ないとチェズレイはも
ピアノ曲ではない、覚えた当初は全く意味の分からなかったオペラ
歌いながらチェズレイは思う。私は思春期の少女ではないのです。
オクターブを下げ、チェズレイは歌う。
母に褒められた金糸雀のような声はもう出ない。
心を込め、感情を乗せて歌う。
この声がショーから戻ってこないモクマに届けばいいのに――
「チェズレイ」
こえがした方を振り向くとチェズレイの唇がモクマに奪われた。
軽く啄むようなキスに離すまいとチェズレイはモクマの頭を掴もう
モクマの熱が入り込んでそれだけで身も心も蕩けそうになってしま
段々と視界が白けてきた頃にモクマはチェズレイから唇を外す。息
「ずるいです……いつからいましたか?」
「自己催眠かけてたでしょ? キスがしたいって言った頃にはもう戻っていたよ」
「だからそれが下衆って言うんですよ……」
「ごめんね」
モクマは啄むようなキスを何度もチェズレイの唇に降らせたのだっ